データ整備で病んで、会社を休んで、運転免許を取りに行った話。

病んで会社を休んで運転免許を取りに行った話_アイキャッチー

今までの社会人人生で、といってもたった6年ほどだが、人知れず泣いたのはこの2回だけだった。

1回目は20代前半、コピーライターをやっていたころ、義祖母のお葬式に出て、その合間に狭い車の中で〆切ギリギリの原稿を書いていたとき。

こんなときに喪服を着てまで仕事をしていて、要領の悪い自分が嫌になった。とても疲れていて、でも〆切に焦っていて、うまいキャッチコピーやボディコピーもぜんぜん出てこなくて。どうしようもなく、なさけなくて涙が出た。
(わたしは「新卒でデータアナリスト→コピーライター→またデータアナリスト」という経歴なのだが、そのへんの話は長くなるので割愛)

2回目は20代後半の2020年夏ごろ、おそらくデータアナリストという職種の人間がカバーすべきではないであろうあれもこれもを必死にさばいていたときに、上司から「えっ、7さんってデータ分析がしたいの?」と言われたとき。

壊れた蛇口のようにとめどなくあふれ出てくるデータ関連の要求を、忙しすぎて会議にすら出られないという上司を通さず、たった1人で浴びまくっていた。上手に取捨選択もできず、社用スマホは21時でも平気で鳴り、死にそうになりながらも何とかがんばっていたわたし。

「データ分析がしたいの?」、のひとことで心がポッキリ折れてしまった。わたしは、データアナリストとしての仕事を求められていなかったのか。わたしの役割は、データ整備をただ黙々とやることだったのか。

そうですね…とか適当に返事したと思うが、そのあとトイレに行ってちょっとだけ涙が出た。データアナリスト3年目だった。


新卒でデータアナリストになったとき、その面接では「データ活用で世の中を動かしたいです!」みたいな大きなことを言っていたような気がする。

大学では、政府が公開している統計データを使わせてもらってちょっとしたグラフなんかを作成する程度だったけど(当時のわたしは本当に残念な大学生で中学生でもできるレベルのことしかしていなかった)、これからは実務でいろんなデータを扱ってマーケティングしていくんだ! というキラキラした希望に満ちあふれていた。みんなでデータを見て議論しながら、より良い選択や新しい提案ができるように、データアナリストとしてあれこれがんばろう! と気合を入れていた。

そしてデータアナリストになり、実際に、意思決定を支援するデータ分析ができたこともある。だがそれはむしろレアケースで、担当業務の大半は、分析以前の下準備や各種調整などの”データ整備”だった。

大学生のわたしは何も知らなかった。使いやすくて綺麗に整ったデータなどほぼ存在せず、BIツールでダッシュボードひとつ作成するのにも四苦八苦し、やった感を出すためだけの大量のグラフ作成を無駄に強いられてうんざりすることを。

思い描いていた理想とはちょっと違うけど、それでも仕事は楽しかった。

大学では扱えなかった、大量の行動データや購買データ。次々に出てくる、新しくて便利でスマートなツールたち。マーケターやデータサイエンティストを陰ながら支えるデータ整備の仕事がほとんどだけど、データから次の打ち手を考えたり議論したりするところは担当できないことも多いけど、それでも楽しかった。SQLを勉強して、できることが増えていくのもおもしろかった。

便利屋扱いされるのも平気。データ抽出が必要なら、データの送受信や更新に問題があるなら、なるべく早く対応してあげたい。入社時にJob Descriptionなんて無かったんだし、頼まれることはぜんぶがんばってやっていこう。前向きにやろう。給料だって悪くない。

でも、同じ会社で働く上司が、データアナリストのわたしに「あなたはデータ分析がしたいのか?」なんて聞いてくる日が来るなんて思ってもいなくて。その日からデータ整備の仕事をするのがつらくなってしまった。

今までそんなに気にしていなかった「明日までにデータを出すことになりました、よろしく!」「追加の作業代は払えないけど、そこは知恵と工夫(0円)でうまいことなんとか!」を言われるのがしんどい。上司からも、仕事のチームの人からも、わたしはデータアナリストとして見られていないんだから…。

これはわたしが悪い、と思う。

作業でいっぱいいっぱいになるんじゃなくて、自分からデータを分析して「こういう部分を見てみてはどうでしょう?」とかもっと提案するべきだった。データの定義を確認してまとめたり、基礎集計をしたりするのも、すごく時間がかかっていたけど、もっと効率を上げてやらなくちゃいけなかった。

自分の経験が足りないから、勉強が足りないから、データ整備の仕事だけでおぼれそうになるんだ。もっとがんばらなきゃ。

でも、あんまり大事にされていないのかも。なんでも言うことを聞く都合の良い作業員だとしか思われていないのかも。そう思うと、がんばる気力がだんだんわかなくなってきて。

いろんな担当案件が少し落ち着いたところで、思いきってお休みをもらうことにした。もう前向きにがんばれなくなってしまっていた。


3週間ほど休めることになったので、ずっとやりたかったことを考えてみて、自動車の運転免許を取りに行くことにした。長野での運転免許合宿。

大学生のころはとにかくいつもお金が無くて、奨学金を借りまくった上でバイト漬けだったので、免許を取りに行くなんて贅沢なことはできなかったから。

楽しい遠足気分も束の間、いざ教習がはじまってみるとわたしはどうやら運転のセンスがないらしいことが判明し、仕事で病んだあとなのにまた病んだ。

普通運転免許のAT限定、という比較的優しめのタイプの免許取得を目指すコースだったが、修了検定(仮免許をもらうためのもの)に落ちた。検定での運転時、横に乗ってくれていた試験官も悲しそうな顔をしていた。

それから、合宿所近くのお寺と神社で「合格させてください、がんばりますから!!!」と頼み込んで、その後仮免許をゲット。卒業検定も、東京に戻ってからの筆記試験も、合格できた。

今、手元には無事に普通運転免許(AT限定)がある。この前レンタカーを運転したら、駐車時に少し擦ったけど。


それからまた仕事に戻って、何か変わったのかといえば、特に何も。

相変わらずデータ整備業務がほとんどだし、そこはがんばっても評価されないのにデータ定義やら集計の条件やらをまとめてドキュメント化するのに時間をかけてしまっているし、予算があまりつかない案件では特に良いように便利屋扱いされることもある。

無茶振りをされて、「今はなんとかなっても後々影響が出ますよ」「追加の作業代をもらえないときついです」と伝えてみるも説得しきれず、貧乏くじを丸飲み。笑ってくれ。

やっぱり、経験が足りなくて、勉強も足りなくて、まだまだしばらくはうまくいかないことのほうが多いと思う。

それでも、まだやってみたいこと、やれることがある。

だから、なんちゃってデータアナリストとして、もうちょっとがんばっていこうと思う。